湯浅和夫の物流コンサル道場「番外編」


『月刊ロジスティクス・ビジネス』連載第38回 (2005年6月号) 「番外編」

                                                (内田 明美子執筆)

《物流 ABC─荷主編》
 

 もし私が本当に本連載中の「体 力弟子」だったなら、どのような質問を受けても、意を尽くした回答で相手を満足させられることでしょう。もし「美人弟子」だったなら、当意即妙なやりとり や逆質問で議論を盛り上げられるはずです。しかし現実の私は、クライアントとの検討会や講習会が終わった後で、いつも「もっと違う言い方をすればよかっ た」とか「こう言ったほうが分かりやすかったかな」などと反省してばかり。

 そこで今回の番外編では、「あ のときこう説明すればよかった」という私のほろ苦い経験も踏まえて、「物流ABC(Activity Based Costing)」に関して、皆さんに本当に知っておいてもらいたいことを文章にまとめてみました。二回掲載の前編となる今回 は、荷主企業が物流ABCを導入しようとするときに必ず出てくる疑問点について、まず解説します。これを読んでいただけば、物流ABCに対する批判の多く が誤解だということを、必ずご理解いただけるはずです。

 

 

Q1. 物流ABCの導入には膨大な手間がかかるというイメージがあります。「作業時間」と「処理量(アクティビティごとに、どれだけ処理したか)」の実態調査に は、どれくらいの日数が必要なのでしょうか?

 

物流ABCによってコスト算定を するときに行う実態調査の最大の目的は、「活動別」(アクティビティ別)に、月間でコストがいくらかかっているのかを正確につかむことです。正確につかむ という意味では、毎日調査するのが一番いいと言えます。実際、物流ABCの活用で成果をあげている企業の多くは、毎日データを取ることをルーチンワークと しています。

 しかし、試しに算定してみよう という場合には、調査になるべく手間をかけたくないというのが人情です。こうしたケースでは、簡便法として、何日か調査をしてサンプルデータを取り、これ を月間にひきのばすという方法をとります。つまり、調査した一日あたりの処理量に稼働日数をかけて月間処理量を推定したり、一処理あたりの作業時間に月間 処理量をかけて月間作業時間を推定するわけです。

 ただしサンプルデータを正確に ひきのばすためには、調査した数字が月間の平均値であることが要件になります。このため実際の調査日の選定は、まずは月間の平均(に近い)と思われる日を 一日だけ選ぶ必要があります。そのうえで、次の段階では、データをとる日数を増やして精度を上げていく、という手順がおすすめです。

 

 

Q2. 当社の物流センターでは物量の繁閑差が激しく、繁忙日には通常日の三倍くらいになります。物量によって作 業効率が変わってしまうため、処理あたり作業時間も日々変化していると思われます。このため平均的な日を調査するだけでは正確な値が出ないと思うのです が、どうすればいいのでしょうか?

 

 正確な値という意味では、波動 による変化を織り込んだ平均値を得る必要があるため、週間波動なら一週間、月間波動なら一カ月間のデータをとったうえで平均する必要があります。とはい え、このような調査を、単に正確なデータを得るためだけにやるのは、あまりにも労力に見合いません。多忙な日常業務の合間をぬって、わざわざ調査をする甲 斐もありません。ですから、こうした調査は、「実態を把握した後で何をするのか」という方針まで考えたうえで実施するのでなければ、おすすめできません。

 そもそも作業効率というのは、 閑散日でも繁忙日でも同じというのがあるべき姿です。物量が三倍になれば作業時間もそのまま三倍になり、一処理あたりの時間は変わらな いというのが本来の望ましいあり方です。これが物量によって変化してしまうとすれば、あるべき姿と実態の間にギャップがあることを示しており、管理のあり 方が間違っていると受けとめるべきです。

 もちろん、忙しい日は急いで作 業をするから効率が上がるとか、忙しかろうがヒマだろうが作業者の人数は変えられないといった、制約条件があるのが実務の世界です。だからこそ、こうした 実態まで踏まえたうえで、あるべき姿と現実のギャップをぎりぎりまで埋めるための工夫を施す必要があるのです。これが適切な管理をするための第一歩になり ます。

 そのためには、アクティビティ ごとにあるべき姿と現実のギャップをつかみ、あわせて、どのような要因がギャップを生み出す原因になっているのかを具体的に把握しなければなりません。そ のために実態調査を行うのだという認識があってこそ、はじめて手数をかけた調査が意味を持つことになるのです。

 

 

Q3. 物流ABCで商品別の物流コストを算定し、商品別の採算を正確に把握したいと考えています。アクティビ ティの数は30〜50個くらいが適切という説明を受けましたが、商品による作業効率の違いを正しく反映させるためには不十分のように思えます。この場合、 すべてのアクティビティを商品別に設定すべきなのでしょうか?

 

 結論から言ってしまうと、明ら かに作業形態が違うもの、特別の手間を要するものだけを別アクティビティとする、通常のアクティビティ設定で十分だと思います。つまり、商品別の「アク ティビティ単価」(一処理あたり作業コスト)を設定する必要はありません。

 その理由を説明する前に確認し ておきたいのですが、物流ABCでは、商品別の物流コストを「アクティビティ単価」に商品別の処理量をかけて算出します。基本的に、商品による違いは処理 量の違いとして反映され、たとえばシールを貼る必要のある商品についてのみ「シール貼り」というアクティビティの処理量がカウントされることになります。 また、ある商品はまとまったロットで出て行くが、別の商品はバラで出て行くため手間がかかるといった場合であれば、バラ出荷分についてのみ「バラピッキン グ」、「バラ検品」といった処理量が加算されるわけです。

 あえて商品別にアクティビティ を設定する必要があるとすれば、同じ作業であるにもかかわらず商品によって作業負荷が大きく異なるため、これを反映するための商品別アクティビティ単価を 設定するといったケースです。ただし、ここで作業負荷の違いをどこまで正確に反映すべきかは、前項でも書いた通り“商品別コストを使って何をどう管理するつもりなのか”によって決まります。

 物流コストがかさむために利益 が出ない商品を廃止するとか、なるべく売らないようにするといった管理に使いたいのであれば、たしかに精緻な単価が必要かもしれません。しかし、このよう な管理をしている企業が現実にどれだけあるのでしょうか。一般の企業は、商品の改廃を、物流コストの多寡とは別次元で判断しているはずです。商品ごとの採 算性を物流コストも踏まえて把握したいというだけの話なのであれば、作業形態で区分したアクティビティ単価を用い、どれだけ通過するか(処理量)を積算す るという計算方法で十分なはずです。

 

 

Q4. しかし、商品ごとに物流コストの負担力を知り、商品価格に応じた許容範囲内に物流コストを納めるように管 理するという使い方もあるはずです。そうなると商品ごとに精緻なデータが必要になるのでは?

 

 そういう管理を実際にやってい らっしゃるのですか? 恐らくやっていないはずです。それが答です。実際の物流管理で、許容範囲内であれば最大限にコストを掛けてもよいという管理はあり えません。物流は本来、やらないのが一番いいもの、物流コストは低ければ低いほどいいものです。現に物流コストをかけることで売り上げが伸びたという事例 は、私の知る限り存在しません。コスト負担力があろうとなかろうと、物流コストはゼロを目指して低減するつもりでいればいいのです。

 さらに言えば、物流コストを下 げようという場合に、これを商品別に行うということも、よほど特殊なケースを除けば考えられません。コスト低減の取り組みは、あくまでも作業区分ごとにな ります。もし仮に、商品別に物流コストの削減目標を設定したとしても、現場では使えない指標になってしまうはずです。

 

 

Q5. 物流ABCは、倉庫内作業を算定対象として行うことが多いようです。しかし、当社の物流コストは倉庫内作 業よりも輸送費のほうが高くなっています。むしろ輸配送活動こそ物流ABCで管理すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

 

物流ABCが主たる管理領域として倉庫内活動を対象としている理由は、“管理の可能性” を考慮しているからです。倉庫内の活動はたいてい自社で作業の仕組みをつくっているため、活動のやり方を自在にコントロールできる裁量も大きくなります。 つまり活動とコストの因果関係をつかめば、コストがかかっている活動を自助努力で変えていける可能性が大きいということです。

 一方、輸配送活動は違います。 仮に配送コストをアクティビティごとに計算し、納品で一件立ち寄るごとにいくらかかっているとか、顧客都合の待ち時間でこれだけコストがかかっていると厳 密に把握できたとしても、これらの活動そのものが顧客の要請によって規定されている部分が大きく、自助努力で変えられる余地は限られています。

 例えば顧客別配送コストを出し て、もし遠い顧客は「運転」というアクティビティのコストが高かったとしても、顧客にその分の費用を負担してもらうのは現実的ではありません。顧客のなか には、おたくの物流センターが遠いだけじゃないかと思う人たちだって少なくないはずです。

 しかし、そうはいっても、待ち 時間や納品回数の違いによるコストの違いを正確につかみ、これらの条件が変わった場合のコスト変化をシミュレーションできるようにしておくことには大きな 意味があります。ことにあなたの会社が小売業で、自社の店舗への納品条件を決定できる立場にあるとしたら、すぐにでも輸配送活動のABCをやってみること をおすすめします。

 

 

Q6. 物流ABCを導入すれば、コスト低減だけでなく、作業品質も向上させられるのでしょうか。物流管理におい てはコストだけでなく品質を管理することも重要なので、コスト低減だけを追及する管理技法では不十分だと思うのですが?

 

物流ABCは品質管理のための技法ではありませんが、これを導入すれば、結果として作業 品質も向上するはずです。

 物流ABCではアクティビティ ごとに理想的な標準動作を解明して、標準時間を設定します。このため、作業時間の短縮を目指す管理を導入し、全員が標準動作を意識するようになると、結果 として作業品質も上がります。作業のやり方を理想型に近づけていくことによって、作業者個々人の資質に起因するミスや事故が発生しにくくなるからです。し かも作業者にとってはムダな動きが減るため、同じ処理をするための労力が軽減されるはずです。

 また、なぜ標準時間で作業がで きないのかという理由を、アクティビティごとに追求していくなかで作業品質が向上することも考えられます。作業の仕組みや、作業者の配置などに関わる問題 点があきらかになれば、こうした問題点を除去していく過程で、同時にミスや事故の発生原因を取り除いていくことになるためです。

 

 

Q7. 物流ABCで言うところの効率化とは、アクティビティごとに投入要素の単価を下げ、投入量を最小限まで減 らすことだとされています。でも人件費の単価を下げるためにアルバイトを使い、一処理あたりの作業時間を縮めるように管理しようとすれば、作業品質は劣化 してしまうのでは?

 

 作業品質の保持は、コスト以前 の管理テーマです。作業品質に不安があるような状態では、コスト低減などやれません。つまり、品質はいかにコストがかかろうとも保持しなければならないも ので、コスト低減は品質が下がらないことを前提として初めてできるものです。

 人件費の安いアルバイトに切り 替えるというのであれば、その前提として、誰が作業をやっても同じ品質でできる体制になっている必要があります。作業時間の短縮も同様で、品質の落ちる恐 れのある時間短縮などやるべきではありません。もっとも、理想的な標準動作を目指して作業のムリ・ムラ・ムダを徹底的になくしていけば、前項でも説明した 通り、作業品質は結果的に向上するのが普通です。

 

 

Q8. これは質問ではなく意見ですが、物流ABCの算定結果から、どの作業にどれだけのムダがあるのかは計算で きました。しかし、これらの作業にムダがあることは以前からわかっており、それを確認しただけという徒労感があります。もっと新しい発見があるのかと期待 していたのですが、この程度なのでしょうか。

 

 率直なご意見なので、私も率直 にお答えしましょう。あなたが物流管理の何たるかを理解している方なのであれば、物流ABCによって活動とコストの因果関係が分かったことに対して、もっ と評価しているはずです。「この程度」という発言が飛び出すということは、ハッキリ申し上げて、あなたは物流管理の何たるかをわかっていない方なのでしょ う。

 言うまでもなく、物流管理の目 標はコストを下げることです。そして実際に物流管理に携わっている方であれば、日々、物流改善活動の実践に苦労し、改善活動を継続していくことの難しさを よく理解しているはずです。

 物流ABCで得られるデータの 良いところは、活動を少しでも改善すると、そのぶんの改善効果がストレートにコストにあらわれる点です。梱包作業時間を一処理あたり一〇秒縮めると単価が いくら下がり、一日のコストはいくら下がるといったことが計算できます。返品が減ったらどうなる、注文行数が一行減るとどうなるといった試算も可能です。 実際に人件費を減らせるかどうかは次の段階の話ですが、効果をすぐにコストで確かめられることに大きな意味があるのです。こうした効果測定のためのデータ がなければ、営業部など他部門を巻き込んだ改善は継続できないでしょう。評価を伴わない改善は、かけ声だけで単発で終わってしまう場合が多いというのが、 現実の物流管理の世界です。

 コストに関するデータから以前 は気づかなかったムダを発見し、コストを下げられる可能性もないわけではありません。しかし、そこにだけ期待して物流ABCに取り組めば、あなたのように 失望するのは当然です。それよりも、改善に関係する人々の貢献度合いを目に見えるかたちで数値化できることによって、従来からわかってはいたけれど改善で きなかった部分の改善が可能になる、という点にこそ注目すべきなのです。



『月刊ロジスティクス・ビジネス』連載第39回 (20057月号)「番外編」

                                                (内田 明美子執筆)
《物流ABC─物流業者編》 

 

1. 物流事業者にとって、物流ABCを導入するメリットは何でしょうか?

 

  いきなり質問をはぐらかすよ うで恐縮ですが、最初に「メリット云々をいっている場合でしょうか?」という話からしたいと思います。もし御社が、荷主から物流ABCで算定したコストを 出してほしいとか、物流ABCによる料金契約を検討したいと言われたら、物流事業者としてどのように対応されるおつもりなのですか?

 もちろん、これが滅多にないや りとりなのであれば心配は無用ですが、いま物流ABCに関心を持つ企業は、業種を問わず、会社規模の大小も問わず、確実に増えています。物流ABCの中身 はよく知らなくても、こうした数字に基づいて物流管理する手法が必要と考えている荷主まで含めれば、もはや無視できるものではありません。

 そして、このような荷主が、物 流ABCについて自ら勉強するよりも、算定は物流の専門家である物流事業者に任せて、自分たちは結果だけをもらって管理に使いたいと考えるのは、ごく自然 なことです。

 この場合、協力物流事業者の立 場で、物流ABCなど知らないとか、算定できないという回答をするのは現実的ではありません。もはや物流ABCは、物流事業者にとって必須になりつつある のです。

 さらにいえば、物流ABCを算 定するために、決して特殊なデータが必要なわけではありません。アクティビティごとにどれだけの処理をしているか、どれだけの時間がかかっているかという 数字は、物流事業者ならば本来、当たり前のように把握しておくべきものです。このような数字があるからこそ、荷主とのビジネスライクな交渉も可能になりま す。

 つまり、これからの物流事業の 展開において、物流ABCは欠くことのできない武器なのです。

 

 

Q2. 物流ABCで荷主別の採算がわかると聞いていますが、うちは人も作業現場も荷主ごとに分けて運用しているため、物流ABCをやらなくとも荷主別採算はほぼ 正確につかんでいます。この場合、物流ABCは不要ということでいいのでしょうか?

 

  あなたの会社では荷主別の採 算をつかんでおられるとのことですが、採算は、把握するだけでは何の意味もありません。改善に向けた取組ができて、はじめて意味を持ちます。あなたの会社 では採算が悪い原因をコストで説明することができますか? 採算を改善するためには何をするべきか、データから具体的に分かりますか?

 恐らく、分からないと思いま す。これは我々が物流ABCについて説明するときに、最初に必ずお話しすることなのですが、従来の物流コスト計算は投入要素別のコスト計算であり、わかる のは「人件費がいくら」、「機械の償却がいくらかかった」といった結果だけでした。ここからは、コストと、これを発生させた活動との因果関係を明確につか むことができません。この因果関係を明示できるコスト計算手法は物流ABCだけなのです。

 活動との因果関係がわからなけ れば、採算を改善しようとか、コストを低減させようといった現実の管理には使えません。コストを変えるためには、活動を変えることが不可欠だからです。つ まり物流ABCは、採算をつかむと同時に、採算を改善するためにも有効な技法なのです。

 

 

Q3. 物流ABCでアクティビティ別のコスト(単価)を出すと、これをもとに複数の営業所間でベンチマーキングを行って、コストを低減できると聞きました。しか し、現場を管理する立場から、私はこれは危険な発想だと思います。荷主のニーズは各社各様であり、現場は言い知れぬ苦労をして、それぞれの荷主の要望に応 えています。荷主ごとの事情を考慮せずに、「同じ作業なんだから最も安い営業所のコストでできるはずだ」というのは、おかしいのではないでしょうか?

 

  アクティビティ単価のベンチ マーキングは、全く同じ内容のアクティビティである場合に限って有効です。同じ内容だからこそ、最も安くできているやり方をベストプラクティスとして、こ れをベンチマーク(真似)していくことができるのです。

 内容が違えば、当然のことなが ら単価の比較は意味を持ちません。作業内容は荷主ごとに各社各様だとおっしゃるなら、あなたの会社の場合はアクティビティ単価のベンチマーキングは不可能 です。しかし、もう一歩つっこんで疑問を持ってみてください。そもそも荷主ごとに各社各様という状態は、本当に荷主ニーズに合っているのでしょうか?

 本当の荷主のニーズは、作業の 「やり方」とは無縁のはずです。顧客の注文どおりに、間違いなく、遅滞せずに届けてほしいというのが荷主の本来のニーズです。これさえ確保されるのであれ ば、作業そのものは最も低コストでやって欲しいと考えるはずです。

 物流のプロたる物流事業者とし ては、「この作業なら、このやり方が最もコストが安い」という自社のベストプラクティスをもっているべきではないでしょうか。そのうえで、荷主の都合に よってやり方を変えなければならないのであれば、どのアクティビティで、どれだけベストプラクティスから乖離するのかを、具体的にはっきりさせておくこと があるべき姿だと思います。

 さらに、ここで物流ABCを用 いれば、乖離の結果としてどれだけコストが高くなるのかという計算までできます。こうしたデータに基づいて荷主に改善提案をできることが、物流のプロとし て信頼を獲得することにつながるのです。

 

 

Q4. 物流ABCでは「処理量」の測定が必要ですが、現実には、簡単にデータを取れない作業が少なくありません。例えば「台車ピッキング」と「フォークピッキン グ」の処理量をとろうにも、台車を使うか、フォークを使うかは状況に応じて変わります。入荷のための「場所あけ」とか、ピッキングエリアの在庫の補充と いったアクティビティにしても、処理量を情報システムや帳票類からとるのは不可能。実測しない限りわかりません。こうしたアクティビティがたくさんある場 合でも、処理量を毎日、実測すべきなのでしょうか?

 

  実測すべきです。実測しない 限りわからないのであれば、実測していただくしかありません。とは言え、手間をかけて実測するだけで、目立った成果は得られなかったという事態は避けたい ものです。そのためにも、物流ABCの導入を契機として、自分たちの仕事のやり方が、本当に望ましい姿になっているのかどうかを、常にチェックする視点を 持っていただきたいと思います。

 あなたが例として挙げられてい るアクティビティをみると、そもそも処理量が取れないこと自体が、本当にそうなのでしょうかとお聞きしたくなります。電話の件数とかトイレの回数といった 処理量であれば、実測しないとわからないのも仕方ないのですが、これらとピッキング作業や補充作業は明らかに性質が異なります。

 ピッキングも補充も、本来、物 流事業者が自ら定めたルールに基づいて反復しているはずの基本的な作業です。どういったの場合に台車を用い、どの場合はフォークでピッキングするのか、補 充は在庫がどれだけになった時点でどれだけ補充するのか、そこにルールがあれば処理量を把握する手がかりも必ずあるはずです。

 ここに明確なルールがなく場当 たり的な対応をしていて、それゆえに処理量がとれないのだとすれば、これは明らかに問題です。厳しい言い方になりますが、プロ失格といわざるをえません。 こうした処理方法が「状況に応じて変わる」ようでは、そこで最適の対応がなされているとは考えにくく、あなたの会社はまだアマチュア的な体制から抜け切れ ていないのではないでしょうか。

 

 

Q5. 物流ABCを使って作業効率を管理するには、すべての作業者が標準時間(最も効率的にやった場合の時間)で作業をできるように管理せよ、とされています。 しかし、これを実際に行うとパート作業者は大きなプレッシャーがかかると思います。過剰な負荷をかけるのを避けたいのですが、どのようなことに気をつけれ ばいいのでしょうか?

 

  標準時間で作業をさせるとい うことの中身について、やや誤解があるように思われます。標準時間で作業するというのは、決して、急いで作業をするという意味ではありません。ムダな動 作、本来必要の無い動作をすべて省いたうえで、適正なペースで作業をするということです。ムダを省くのですから、作業者にとっても望ましい作業内容になる わけです。

 もう少し詳しく説明すると、標 準時間による作業と実際の作業との格差は、「個人的ムダ」と「制度的ムダ」の二種類のムダから構成されます。

 作業者個人の資質や意欲の格差 によって発生するのが「個人的ムダ」、何らかの理由で作業ができない手待ちが発生してしまうとか、作業が中断されて二度手間になるというように、作業者個人に関係 なく発生しているのが「制度的ムダ」です。

 物流現場の場合、アクティビ ティごとに標準時間の調査を行うと、標準時間と実際の作業時間の格差は予想以上に大きく、全作業時間の三分の二がムダだったという調査例すらあります。原 因の大半は「制度的ムダ」です。「個人的ムダ」は平均してしまえば知れています。これだけの格差を発生させているのは「制度的ムダ」に他なりません。

 あなたの倉庫にも、個々の作業 者の負荷を増やすことなく取り除くことのできる「制度的ムダ」が、必ずあるはずです。これをあぶり出せることも、物流ABCを導入するメリットの一つなの です。

 

 

Q6. 物流ABCで荷主別コストを正確に把握しても、このコストに応じて料金を値上げするのは現実には不可能です。荷主に対して理論武装するという考え方はわか りますが、実際の収益改善には役立たないのではないでしょうか?

 

  非常によくいただく質問とい うか、ご意見です。しかし、ご指摘をそのまま受け入れると、「物流事業者には実際の収益改善は不可能だ」という結論になってしまいます。それでは話になり ませんので、「実際の収益改善」の中身を真剣に考えてみる必要があります。

 言うまでもなく、実際に収益を 改善するためには、コストを下げるか、収入を増やすかのいずれかが必要です。コストを下げる上で物流ABCがどう役立つかについては、前項の「Q5」で説 明したような効果が期待できます。ここで考えたいのは、収入を増やすために、どう役立つのかということです。

 物流ABCでは、適正な料金を 収受できていない荷主を具体的に明らかにすることができます。利益が出ていないことは予めわかっていたという場合も多いのでしょうが、物流ABCでコスト を算定すると、どの作業が赤字の原因なのか、効率化(作業単価の低減)でどこまで収益改善できるか、コスト低減をしてもなおかつ赤字だとすれば、その赤字 金額はいくらになるのかといったことまで試算できます。

 これ以降は荷主との交渉になる ため、ご指摘のとおり、一度や二度の交渉で適正な料金を受け入れてくれる荷主はむしろ少数派でしょう。認めてもらえるまで、粘り強く交渉を繰り返すしかな く、データがあれば必ず認めてもらえるという保証も無論ありません。しかし、少なくともデータがなければ、ビジネスライクな交渉は極めて難しいはずです。 コストがわかって、はじめて荷主との交渉のテーブルにつけるというわけです。

 

 

Q7. 作業会社の者です。元請会社が物流ABC導入したいとのことで、とても詳細な作業日報を記録するように指示されました。うちにとってはあまりメリットが感 じられず、ただでさえ忙しいのに手間ばかり増えて、やりきれない思いです。作業会社がメリットを得られるような、物流ABCの活用方法はあるのでしょう か?

 

  結論から言うと、むしろ作業 会社こそ、物流ABCを積極的に活用するべきだと私は考えています。元請けとの料金契約のやり方にはいろいろな方法があるのでしょうが、最も論理的な契約 方法は、アクティビティをベースとした契約です。アクティビティごとに単価を設定し、これに実際の処理量を乗じて料金を計算するのです。

 これは作業負荷を明確に反映で きる料金体系でもあり、荷主から「コスト低減」への協力を求められた場合にも、作業効率(単価)は作業会社が責任を持って管理する、処理量については元請 が責任を持って荷主と交渉する、という明確な責任区分の下で話を進めることができます。

 実際にアクティビティ・ベース の契約で仕事をしている作業会社は、まだ多くないと思いますが、それでも作業会社が自らのアクティビティごとの作業単価を把握しておくことは有用です。 「Q6」で述べたように、コストデータがなければビジネスライクな料金交渉のテーブルに着くことすらできませんからね。

 さらに、こんな例もあります。 ある現場では、元請会社が限られたスペースにたくさんの荷物を詰め込んでしまうために、作業会社は作業が極めてやりにくく、効率が落ちているという不満を 持っています。ラックが常に満杯状態で、入庫スペースをつくるために荷まとめ作業を頻繁にやらなければならないとか、パレットを置きすぎているので通路が 狭くピッキングの際にフォークが通れないなど、具体的な支障が発生しています。しかし、元請会社は何の対処もしてくれず、料金値上げの要請にもとりあって もらえません。

 元請としては荷物をたくさん詰 め込んだほうが荷主からの保管料収入が多くなりますし、一方で、作業会社への下払いはケース単価です。ケース単価は荷主からの荷役料収入から逆算して利益 が確保できるように設定してあるので、元請にとっては、作業効率が悪くても何ら痛痒は無いわけです。

 ここで作業会社が泣き寝入りし ないためには、物流ABCで元請の責任を明らかにする必要があります。「荷物の過剰な詰め込み」が、どのアクティビティにどれだけの作業効率の低下を生ん でいるか、これがどれだけのコストアップにつながっているのかを数字で示すべきなのです。

 コストが高いのは決して作業会 社の責任によるものではないことを明らかにしながら、今のコストで必要な作業料金、必要な荷役料はいくらになるのかを具体的に提示すべきです。現実のビジ ネスのなかで、こうした交渉を進めるのは容易ではありませんが、実態を数値で把握することが活路を開くための出発点になるはずです。



『月刊ロジスティクス・ビジネス』連載第40回 (20058月号)「番外編」

                                                (芝田 稔子執筆)


《在庫管理──基礎編》

 

「大先生」は暑いのが苦手だ。今 年の夏も、最寄のJRの駅から事務所まで歩くのを早々にあきらめ、わざわざ地下鉄に乗り換えて歩行距離を短縮している。しかも途中で必ず事務所に電話を入 れると、「室温、下げといて」と一言。入った瞬間の「ヒヤ〜〜っと」した感触が大事なのだそうだ。そのくせ数分もすると寒いと言い出すのだから始末に負え ない。エアコンも苦手なのである。

 今日も「大先生」はパタパタと 扇子を使いながら、「おーい、例の原稿どうなってる?」と事務所内の間仕切りごしに「弟子」に声を掛けてきた。

 ロジビズの連載原稿の執筆から 一時的に解放されたせいか、暑さとの闘いにも心なしか余裕があるようだ。

 「物流ABC については、あれくらいQ&Aで説明しとけばいいだろう。ところで最近はみんなSCMがどうのとか言ってるけど、ベースとなる在庫管理」のレベルすら企業によってばらばらだ。そこらへんについても、きちんと整理しておく必要 があるんじゃないか?」

 そう言って「弟子」に課題を与 えると、「じゃあオレは、もうちょっと涼しいところに行ってこようかな」などとつぶやきながら、さっさと事務所を出て行ってしまった。どうやらロジビズの 編集者から夏休みをもらった気分でいるらしい‥‥

 読者の皆様、はじめまして。大 先生事務所─もとい湯浅コンサルティングの芝田です。そういうわけで、今回は「在庫管理」をテーマに取り上げます。コンサルティングの現場で出会った方々 の生の声をもとに、在庫管理について私なりに考えていることを整理して、今回から二回に分けてお伝えします。

 内容に関するご意見ご批判があ りましたら、ご遠慮なくお寄せください。湯浅コンサルティングのウェブサイトにある「スタッフのプロフィール」欄から、簡単に芝田宛のメールを出せるよう になっています(ホームページのアドレスは文末のプロフィール欄参照)。

 では、さっそく始めましょう。

 

在庫管 理とは何か

 まず最初に、本稿で取り上げる 「在庫管理」が、荷主から荷物を預かる営業倉庫における“在庫 管理とは、まったく別モノだということをハッキリさせておく必要があります。

 営業倉庫は、在庫を保管するこ とによって収入を得ています。ここにおける在庫管理とは、預かっている荷物を汚したり傷つけたりしないよう、在庫の「質」を管理することを意味していま す。

 一方、本稿で取り上げる「在庫 管理」の主体は、あくまでも「荷主」です。営業倉庫との対比でいえば、荷主とは、在庫を販売することによって収入を得ている事業者と定義することができま す。

 いま企業経営において、在庫の 問題は無視できないほど大きなものになっています。そのことに気づいた多くの企業が、在庫を減らすためのさまざまな対策を進めてきました。サプライチェー ン・マネジメント(SCM)やロジスティクスも、つまりは在庫を最小にしようとする取り組みです。そして、いずれも正しい在庫管理がともなわなければ実現 できません。

 しかし、実際に各社が行ってい る在庫管理の内容を見てみると、企業ごとに大きな格差が生じていることがわかります。先進的な企業が、遅れている企業の話を聞くと、「いまだにそんな状態 なの?」と呆気にとられるほど差は拡大しているのです。

 

いい在 庫管理・わるい在庫管理

 ここで、皆さんの在庫管理に関 する“常識・非常識”を整理してみたいと思います。ロジビズの読者は、すでにかなりのレベルに達している方々が少なくないと思いますが、まずは次にあげた 項目を読んで、自分の気持ちとして素直に納得のいくものにだけマル印をつけてみてください。

 では、マル印の数を数えてみて ください。いくつになりましたか?

 マルの数が多いほど、アウトで す。そう、ここにあげた項目は、在庫管理をする上ですべて間違いなのです。なぜ間違っているのか。それぞれのNG(No Good)について一つひとつ見ていくことにします。

 

@適正 在庫量を保つのが在庫管理である

 少し意地悪な設問だったかもし れません。でも、こうした考え方に素直に納得してほしくないため、あえて一つ目のチェック項目に持ってきました。

 この設問にマルをつけた方にお 聞きします。「適正」とはどういう意味で使っていらっしゃるのですか? 

 在庫の量について「適正」とい う表現をしてしまうと、在庫管理はそこで止まってしまいます。「適正」な量にたどり着いたのだから、もうよいではないかということになってしまうからで す。しかし本来、在庫管理とは、永続的に在庫削減のための取り組みを続けていくことを意味しています。「適正在庫」のような言葉を使って、それが正しい水 準だと思わせるような表現はしないほうがよいのです。

 私はさきほど、在庫管理は、需 要に合わせた量を管理することだと述べました。この「量」はどういうものかといえば、「制約条件下の最小」という量を指しています。これは「適正」と同じ 意味でしょうか?

 在庫管理には二つのミッション があります。「制約条件下の最小在庫」を管理するということが一つ。もう一つは、制約条件を少なくして持つべき在庫をさらに少なくするというものです。こ の二つのミッションからすると、在庫に「適正」な量など存在しないと言わざるをえないのです。

 

A在庫 は自然に増えるもの。定期的に在庫削減を行うべきだ

 世の中には「何度も在庫削減を 行っている」という会社があります。これだけでも、在庫管理不在の証明と言えるでしょう。

 在庫は「自然に増える」のでは なく、管理できていないから増えるのです。もちろん、商品の入れ替えなどで不要になる在庫はあります。このようなものについては、在庫削減ではなく在庫処 分を行うべきです。

 

B在庫 が増える原因は複合的であり、簡単には解決できない

 「複合的」と 捉えている限り、どんな問題も解決は難しいはずです。在庫が増えてしまう究極的な原因は、たった一つです。在庫に責任を負っている人がいないからです。

 たいていの会社は、在庫を減ら すための社内会議を催したことがあるはずです。そんなとき、在庫が増えてしまう原因として次のようなことがよく言われます。

・営業が売るといったのに、計画 通り売らないから在庫になる

・生産効率を考えて作りすぎるた め在庫になる

・仕入原価しか考えずにロットで 仕入れるから在庫になる

 営業部門や製造部門、仕入部門 まで槍玉にあがっていますが、読者の方々の中にも「そうそう」と頷いた方が少なくないのではないでしょうか。「こんなふうに在庫の問題は原因が複合的なん だよなぁ」と。

 とんでもありません。そのよう な認識では、在庫の問題は永久に解決できないはずです。誰も在庫に責任を持つ人がいないから、いけないのです。まず、誰が在庫に責任を持つのかを決める必 要があります。

 では、在庫に責任を持つ人(こ こでは「在庫責任者」と呼ぶことにします)は、何をすればよいのでしょうか。先に述べたように、在庫管理は、需要に合った在庫の「量」を管理することでし た。ならば、在庫責任者のミッションは、「需要に合わせて必要な量を持つ」ことに他なりません。このようなミッションを背負っている在庫責任者が、仕入原 価や生産効率のことまで考えるというのはおかしな話ですよね。

 在庫責任者の役割とは、売れ行 きに合わせて生産したり仕入れる量を決めることだということになります。まず、在庫責任者を決めましょう。それが在庫管理の出発点です。

 

Cたし かに自分が所属する会社の在庫は多いため過剰在庫の心配はあるが、そのぶん欠品は少ないはずだ

 気持ちはわからないでもありま せんが、これも大きな誤りです。過剰在庫が発生している可能性があるのなら、欠品も同様に発生している可能性があります。

 なぜなら、過剰在庫も欠品も、 在庫管理が不在であるがゆえに発生するものだからです。

 

D在庫 は、特売用在庫も通常販売用在庫も、すべて一括して管理するべきだ

 こういう管理をしていると、在 庫管理はめちゃくちゃになってしまいます。特売用と通常販売用の在庫は、同じ商品であっても、まったく別モノとして管理しなければなりません。

 通常販売用の在庫は、出荷動向 に関わるデータがあります。このデータをもとに、「明日いくついるか」を計算することが可能です。

 一方、特売では、必要な量は、 それこそ特売の企画ごとに異なるはずです。同じ商品の通常出荷データから、特売の必要量を決めることが本当にできますか? 参考にはするとしても、本 来的に無関係です。

 仮に、通常販売で一日に平均10個売れる商品があるとして、この商品を特売にかけたら一日に300個 売れたとします。通常販売も特売も一括して管理するという場合、この商品は一日300個売れるとい うデータができてしまうことになります。しかし、言うまでもなく、特売が終わればこんなに売れるわけがありません。従来どおり一日10個程度のペースに戻るはずです。特売データをもとに通常販売のための補充をしたりすれば、大変なことに なってしまうのです。

 量をコントロールするために、 特売品と通常品は明確に区別して管理しなければいけません。さらに、特売のために準備する在庫については、この商品をある店で特売しようと意志決定する人 に責任を持ってもらいましょう。その人以外には、誰も責任を取ることはできないのですから。

 

E営業 マンが自分だけの在庫を確保するのは顧客サービス上必要な行為で、在庫管理をするうえで問題にすべきことではない

 おおいに問題にすべき行為で す。このような状況にある会社には在庫管理上のあらゆる課題が山積しているとすら言ってよいでしょう。

 まず、営業マンを在庫の心配か ら解放しましょう! 営業マンは本来、自分用に在庫を押さえておきたいなどとは考えてはいません。にもかかわらず押さえているとしたら、自分の得意先から 注文が来たときに、欠品していて納品できなかったという経験が少なからずあるからではないでしょうか。

 そんな事態が続いているとした ら、営業マンのそうした行動は確かに非難できるものではありません。欠品が続けば、営業マンばかりか会社も信用を失ってしまいますからね。

 しかし、営業マンのその行動 は、在庫管理上は大きな問題を引き起こします。在庫の実態がわからなくなってしまうからです。いくつ仕入れたかはデータでわかるとしても、営業マンがどれ だけ自分の車や、机の下や、倉庫の棚に隠しているかというデータはないはずです。データがなければ、在庫管理は不可能です。

 このような問題を解決するため には、営業マンに在庫の手配をさせないようにする必要があります。「在庫責任者」をおいて在庫の管理を任せるべきです。そうでなくとも営業マンというの は、顧客のことを考える余り、つい多めに在庫を持ってしまいがちですしね。

 もし欠品が出たら、それは「他 の誰かが持っているかも」ではなく、社内のどこにもない、あるいは絶対的に欠品であるという状況をつくってしまうことを、おすすめします。

 

F在庫 金額はすぐにわかるので、うちの在庫管理レベルはまあまあだろう

 残念ながら金額がわかるだけで は、在庫管理レベルはまあまあとは言えません。在庫の量はわかりますか? 在庫量と最近の出荷状況とを比べてみることができますか? こうしたことができ なければ、在庫管理はやっていないのと同じです。

 「いくら売り 上げた」というデータがない会社は常識的にありえません。どこでも把握しています。一方、在庫については、「いくつ出荷した」というデータのない会社が少 なくないのが現実です。

 在庫管理は量をコントロールす るマネジメントです。極論すれば、金額は関係ありません。その意味では、在庫金額がわかるだけでは在庫管理は不可能で、量が分かる仕組みになっていなけれ ば意味がないのです。

 

G在庫 は資産であるから劣化しないよう保管に気をつけることが、在庫管理の最重要ポイントである

 もちろん、これも大事なことで す。しかし、繰り返しになりますが、本来やらなければならないことは在庫の「量」を管理するということです。

 ところで、今の時代に、在庫は 本当に資産と言えるのでしょうか。資産とは、「価値が変わらない」か、持っていれば価値が上がるものを言います。最近、在庫を罪庫と書いたり しますが、とても在庫を資産と言い切れる時代状況にはありません。在庫を“罪庫”にしないために行うべきことが、在庫管理なのです。

 

➈調達 のリードタイムが長い場合、そのぶん在庫は多めに持たざるを得ない

 調達のリードタイムと在庫量 は、本来、関係ありません。毎日発注すれば毎日納入されるわけですから、一日分で運用できるはずなのです。

 ただし、リードタイムが一カ月 とか三カ月のように長い場合、どうしても予測を伴います。予測が当たらないのではないかという懸念が当然、出てきます。余ることもあれば足りなくなること もありますが、どちらも困った問題です。こうしたケースでは一般的に、欠品を防ぐために在庫を多めに持つようになります。

 この問題を解決するには、何ら かの工夫によって、リードタイムの短縮をはかることが重要になります。

 

I納品 ロットによって仕入原価が違う場合、「最小の在庫量」を目指すよりも、「最小の仕入原価」を目指したほうがトータルコストは安くなる

 このような比較をするのが、そ もそも誤りです。在庫管理を考えるときには、NG3の項目でもふれたように、仕入原価のことなど考えるべきではありません。

 あくまでも在庫は、市場に合わ せて過不足なく持つことを目指すべきです。全社最適を目指すうえで、これが一番よい方法だからです。一方、「仕入原価」は部門最適の基準でしかありませ ん。同じ土俵に上がりえない基準どうしを比較しても、優劣を競うことはできないのです。

 例外として、売り切ることを前 提にまとめて仕入れるような場合には、「最小の仕入原価を目指した」と言うこともできるでしょう。しかし、この場合には、売り切ることが前提になっている わけですから、「需要に合わせた量を管理する」という在庫管理の世界からは、すでに外れています。

 

Jベテ ランほど記憶力に頼って仕事をしているが、ベテランとはそういうものだから仕方ない

 在庫管理を実現するためには、 在庫の置き場である倉庫内のオペレーションの精度も確保する必要があります。もし、倉庫内で記憶力に頼って仕事をするようなやり方が行われているならば、注意が必要です。なぜなら、「○○さんにしかわから ない」という状態を招くことになるからです。

 往々にしてベテランと呼ばれる人は、現場を知り尽くしているために、そのような状態を作り出しがちです。し かし、その状態は、決して誉められるものではありません。

 作業者が記憶力に頼ってシステ ムを無視した作業を行っていると、その部分はデータ不在になってしまいます。正しい在庫管理を実現するためには、データをもとに物品を動かすことが大前提 になります。「作業をするのにシステムの支援などいらない」というベテランであっても、正確なデータをとるための仕事はきちんとやってもらわなければなり ません。





『月刊ロジスティクス・ビジネス』連載第41回 (2005年9月号) 「番外編」

                                                (芝田 稔子執筆)
《在庫管理──実践編》

 

“大先生”はクールビズが気に 入っている。暑さが大の苦手の大先生にとって、いつでもどこでもノーネクタイで過ごせる状況は好ましい限りだからである。

 「いい機会で すから華やかな色でもお召しになっては?」

 洒落たことの好きな“女史”の 一言で、大先生のシャツあさりがスタートした。そして、スタッフの苦労も始まった。毎日、着ているシャツについてコメントしなければならない。しかも、あ りきたりの褒め言葉では大先生は満足しない。どんなことにも独自の美学を持つ大先生。今日は不思議な色のストライプのシャツを着ているが、女史がうまく褒 めたのでご機嫌である。安心して弟子たちが仕事を片付けていたら、いきなり指導が始まった。

 「そういえ ば、ロジビズの連載では在庫管理をとりあげていたんだよな。在庫管理の方法論について書いてあるオレの“虎の巻”をやるから、それに基づいてきっちりまと めてみろ」

 黄色と黒の布で包まれた巻物 が、さも大事そうに弟子に手渡された。

     *    *     * 

 そんなわけでロジビズの読者の 皆様、今回は在庫管理の「方法論」についてまとめてみたいと思います。虎の巻には、下記のような戒めが書かれていました。今回は、これに基づいて説明を進 めていきます。

 

1.在 庫があるからそれを管理することが必要になる。在庫がなければ在庫管理も必要ないことを肝に銘ずべし

 

 当たり前のことを言っているよ うですが、これはつまり、在庫管理とは「在庫をなくすためのマネジメント」であるということを肝に銘じることで、さまざまな過ちを防げるという心構えで す。このため、もし「在庫管理が進んだ」と言う機会があるとすれば、それは在庫量が減った時ということになります。

 在庫管理には二つのミッション があるということを前号の「基礎編」で説明しました。読まれていない方のために簡単に繰り返しておきましょう。

 在庫管理は「在庫をなくすため のマネジメント」です。在庫をまったく持たずに商売ができるようになれば在庫管理をする必要もなくなるわけですが、実際はそうもいきません。一回生産する と一〇日分の製品ができてしまうといった制約条件から、在庫を持たざるを得ない状況が生まれてくるからです。

 このような状況下で在庫管理を 行うためには、一つには、「持つべき在庫量を必要最小限に抑え込むこと」が必要です。これが日常的な管理になります。ただし「持つべき在庫量を必要最小限 に抑え込むこと」については、人が関与する必要性は薄いと言えます。必要量を求める計算式に則り、計算の結果としての補充量をきちんと補充して行けば、う まく管理できるからです。この管理の方法については、後ほど3.でもふれることにします。

 そして、もう一つは「持つべき 在庫量を減らすこと」、すなわち在庫に関わる制約条件を減らしていくというミッションです。これについては5.で詳しく ふれたいと思います。

 さて、本題に戻りましょう。さ きほど「在庫がなければ在庫管理も必要ない」と申し上げました。本来、管理業務とは、少ないほどいい。ここから管理業務とは、管理の対象をなくすように行 うべきだといえます。つまり在庫管理とは、この管理業務をなくすべく、管理の対象である在庫を減らすために行うものなのです。

 

2.た だ在庫量を市場動向に同期化させること、すなわち出荷に合わせて補充することだけを考えよ

 

 これは、在庫管理を実践してい くための心得ということができます。在庫管理を行おうとしているときに、それを邪魔しようとするものが生じることがあります。その一つで、よくあるのが、 以下のような「市場動向と無縁の発想」に関わるものです。

 在庫管理は、市場における需要 の変動に対応するために行います。ですから、在庫管理のための行動は、需要の変動に対応するための最適な方法をとる必要があります。

 ところが、いろいろな会社で 「効率」のような問題が登場し、上記の原則をいとも簡単に反故にしてしまうのです。

 たとえば、ある商品について、 市場の動向からみれば「100個用意しておけばよい」という状況があったとします。しかし、そこで100個用意しようとしたら、いろいろな反対の声があがることが少なくありません。

 500個まとめて買えば仕入れ単価が下がる。どうせそのうち売れるんだから、少しでも安く仕入れるほうが会社 の利益につながる」とか、「あまり細かく発注するのは手間がかかって大変だ。もっとまとめて仕入れておけ。事務作業の効率も考えよ」といったものです。

 一見、もっと もな意見に感じられるかもしれませんが、このような意見に左右されてはいけません。こうした意見は在庫管理の本来の目的を忘れています。

 いずれも、効率や各部門の都合 を追求したいが故に出てくる意見といえますが、ちょっと考えてみてください。これまで、ずっとこのようなことを追求してきた結果、たくさんの不良在庫を生 み出してきたのではなかったのですか?

 在庫管理をしようとするなら ば、効率のことはいったん忘れてください。市場の動向からみて必要な量だけを在庫すること。これが在庫管理の最優先課題です。これを行うためには、市場へ の出荷に合わせて補充を行っていくことが必要です。どれだけの量を補充するべきか、これは市場への出荷動向から、計算することができます。

 もちろん新商品などは別です が、需要の落ち着いた定番品については、人が介在して補充量を求める必要はありません。計算結果どおりの量を補充していくことで、過不足のない在庫管理を 行うことができます。

 そのために欠かせないのが出荷 動向のデータです。これを「日数」をベースに把握することにより、市場の動向にぴたり合わせた在庫管理が可能になります。

 そして、補充量を計算するため に必要なのが「発注法」です。皆様もお馴染みであろうと思いますが、以下の四つの手法は、在庫管理の本などに必ず紹介されています(図2)。商品の特性に よってこれらを使い分けよと紹介されている場合もあり、この発注法はいわば在庫管理の方法論としては基本中の基本として、これまで位置づけられてきまし た。しかし、よく見てみてください。

 在庫管理とは、在庫量を市場の 動向に同期化させることでした。また、その前提として「市場の動向は変動するものだ」ということがあります。これらを考えると、上記の「発注法」のうち、 発注量も発注時期も常に決まっている「定期定量発注法」は、現実的には使えないということになります。

 では、発注量は決まっているけ れども発注時期は変動する「不定期定量発注法」についてはどうでしょうか。「ツービン法」などがこれにあたります。この手法は、同じ大きさの入れ物をあら かじめ二つ用意しておいて、一つが空になったら一つ分を補充するというものです。単純で管理も簡単なため、現実に使っているところがあります。

 発注時期を「不定」にすること によって、補充のタイミングは市場に合わせることができそうにみえますが、しかし、これについても「定量」というところが問題です。需要が落ちていても、 伸びていても、同じ量を補充するしかないのです。需要が落ちているところへ従来通りの量を補充してしまったら、いつまでも残ってしまい不良在庫になりかね ません。一方、需要が伸びているところへ、これまでと同じ量しか補充しなかったならば、あっという間に足りなくなってしまいます。

 つまり、需要の変動に対応する ためには、何も決まっていない「不定期不定量発注法」が最適だということになります。これから在庫管理を進めようとする場合にはまず、この発注法をとるこ とを前提に検討してみてください。補充の指示をかける日に制約がないのであれば、みなこの方法でよいはずです。すなわち、卸売業、小売業の場合は、みなこ の方法でよいでしょう。メーカーであっても、工場倉庫から補充を受ける地方拠点であれば、この方法でよいと思われます。

 また、「定期不定量発注法」 も、今後の発注法ということができます。なぜなら、生産現場などでは、生産サイクルの関係から、「いつ補充の指示を出しても、すぐ補充してもらえる」とは 限りません。金曜日までに生産指示を出してもらわないと次の週の生産に間に合わないとか、補充のタイミングに制約がある場合には、「定期不定量発注法」を 採用してください。ただし、これは基本的に生産現場を持つ場合のみと考えられます。

 

3.在 庫管理において実数など何の意味もない。日数をベースに行うことこそが肝要なり

 

 これは、必要な在庫量をどう見 極めるかということです。

 ある卸売業者の納品センターが あるとします。365日稼動しています。そこで在庫されている「X」という商品が、いま500個あります。この商品は、過去一年間に三万個売れました。

 さて、500個という在庫量は、在庫管理の点からみて、どのような意味を持つのでしょう。十分でしょうか、不十分で しょうか?

 試しに一年間の販売個数を稼働 日数で割ってみましょう。

 

3万個÷365日=82

では、この82個と在庫量500個を比較すると‥‥??

大幅に上回っているので、在庫量 としては余裕がある状態???

しかし、商品Xには季節波動があ るかもしれない????

 

 ‥‥これでは埒が明きません ね。

 在庫量については、「個数」な どの「量」をみるだけでは、まったく判断のしようがないのです。では、どうすればよいかといえば、判断材料になるように「量」を読み替えればいいのです。

 在庫は、最低限、今日の出荷を 行える量を持っていればよいと言えます。すると、必要十分な在庫というのは、「今日一日の出荷に対応できる量」ということになりますね。ここで「一日分の 出荷とはどれくらいの量なのか」、これを指標にすればよいということが出てきます。

 商品Xの販売状況をみてみま しょう。過去一年間では長すぎます。需要は変動するわけですから、過去三週間分から二カ月分くらいをめどに調べてみてください。

 調査するのは、出荷があった日 と、それぞれの日の一日あたりの出荷量です。そして、その平均を求めます。これを「一日あたり平均出荷量」と呼びます。商品Xはいま、一日あたり平均出荷 量が200個であることがわかりました。

 すると、どうでしょう。現在の 商品Xの在庫量は、「二・五日分しかない」ということになります。この商品のリードタイムが二日ならば、すぐ補充をかけなければなりません。

 こんなふうに「日数」で在庫を みていくと、市場での販売動向に照らして、いま持っている在庫が過剰なのか、不足なのか、いつ補充すればよいのかなどを、計算によって求めることができま す。

 そこでは三つの「日数」が必要 になります。「出荷対応日数」、「リードタイム日数」、「在庫日数」です。

 「出 荷対応日数」とは、現在ある在庫量のことです。これを「一日あたり平均出荷量」で割ると、「現在ある在庫量で、あと何日分の出荷に対応できるか」という値 が出てきます。これを「出荷対応日数」と呼ぶのです。先の例でいえば、「二・五日分」というのが出荷対応日数です。この日数を算出することが、まずは在庫 管理の第一歩になります。

 少し横道にそれますが、読者の 皆様も、ぜひ以下に説明する算定を試してみてください。在庫管理がきちんとできているかどうかを判定できます。算定は簡単です。一カ所の在庫拠点につい て、すべての在庫アイテムを対象に以下の数値を求めてください。

@アイテム別月間出荷日数を求め る

Aアイテム別月間出荷量を求める →A÷@=一日あたり平均出荷量(A)

Bアイテム別月末在庫量を求める →B÷A=出荷対応日数

 

 出てきた答えはいかがでしょう か。アイテム別に一定以下の(例えば「およそ一五日分以下であった」など)ほぼ揃った数値になれば、御社の在庫管理はうまく行われているといえます。しか し、アイテム別にばらばらな出荷対応日数が出てきたら、それは管理不在の証拠。在庫管理がうまくいっていないということになります。

 それに、@の出荷日数も気にな るところです。一カ月の間にあまり出荷されない商品はありませんでしたか? 現実には、全アイテムのうち半分近くが月に一度も出荷されていなかったといっ た配送センターもあります。“配送するためのセンター”という役割から考えればおかしな話です。

 このようなケースでは、出荷日 数の少ない商品は、配送センターには保管しないというルール作りも考えられます。保管アイテムが減れば、在庫量も減りますし、センターの運営もぐっと楽に なりますからね。

 さて、だいぶ横道が長くなって しまいました。本題に戻りましょう。二つめに必要な「日数」である「リードタイム日数」は、文字どおりリードタイムの日数です。不定期不定量発注法では、 これが「発注点」になります。

 リードタイム日数とは、「今日 発注したら入荷までに何日出荷があるか」ということから求めます。例えば「今日の夕方発注すると、明日の夕方入荷する」ということでしたら、リードタイム 日数は「一日」になります。

 ところで、発注点に達したら、 どれだけの量を発注すればよいでしょうか。すでに「量」では管理できないと述べました。ここでも日数を使います。「何日分の在庫を持つか」を決めておき、 これを枠として発注するのです。これが三つめの日数で、「在庫日数」と呼びます。

 管理のための計算ロジックは以 下のとおりです。

 

@アイテム別に出荷対応日数を計 算します(=在庫量÷一日あたり平均出荷量)。

A出荷があるたびに一日当たり平 均出荷量と出荷対応日数を計算しなおします。

B出荷対応日数が、発注点すなわ ちリードタイム日数にふれたとき在庫日数分を補充します。

 

 こうして計算すれば、いつも出 荷動向に照らした形で「補充すべきか否か」を判断することができるのです。では、このロジックに基づいて在庫の補充を繰り返していくとどんなふうになる か、在庫の動きをみてみましょう。

 図3はとくに需要が変動しな かった場合の基本的な動きです。一日目からみていくと、日が経つごとに「一日分」出荷されて、出荷対応日数が一日分ずつ減っています。リードタイム日数の 二日分にまで減ったところで「三日分」の発注がかかり、そのまま一日分ずつ出荷対応日数は減ってきますが、六日目にちょうど持っていた在庫がゼロになった ところで補充が行われて、出荷対応日数は「三日」となっています。

 七日目に再び発注点がきて発注 が行われましたが、その後は出荷がなく、在庫量は減りませんでした。そこへ補充が行われたので、出荷対応日数は「五日」にまで増えています。その後はまた 「二日分」に減るまで発注は行われません。このように一時的に五日分までふくらむことはあっても、その後は補充が行われない仕組みになっています。

 次に、需要が増加した場合の在 庫の動きをみてみましょう(図4)。先ほどのグラフよりも頻繁に発注がかかっています。これは、どういうことかというと、需要が増えたために「一日あたり 平均出荷量」の値が増えているためです。例えば九日に「三日分」発注していますが、補充された十一日には、その量は「二日分」にしかあたらないということ で、この日も早速発注がかかっています。需要が増えているときにはこうして欠品を防ぐのです。

 一方、需要が減少した場合に は、在庫が過剰になるのを防ぎます(図5)。といっても出荷をコントロールすることはできないので、補充しないようにするしかありません。「一日あたり平 均出荷量」の値が小さくなるため、発注の間隔が大きくあいてきます。

 

4. 「適正在庫」なるものがあるとすれば、現行の制約条件下の「必要最小限の在庫」がそれなり

 

 ここまで読んでいただいたなら ば、在庫すべき量は常に変動させるべきということがお分かりいただけたと思います。在庫すべき量を「適正」と呼ぶのであれば、「適正」は常に変動すること になります。

 「適正在庫」 という表現はよく耳にしますが、この言葉を使うには注意が必要です。このアイテムについては「○○個が適正」であるとか、「○日分が適正」というふうに、 「適正量」を決めてはなりません。在庫を減らす努力が、そこで止まってしまうからです。

 究極の適正は、あくまでも「在 庫ゼロ」です。在庫管理の目的は、在庫をゼロに向かって近づけていくことですから、前回も述べたように、それを中断させるような設定をすることは避けなけ ればなりません。

 「適正在庫」 があるとすれば、それは現行の制約条件からみて、持たざるをえない在庫量、すなわち「必要最小限の在庫」ということになります。

 

5.現 行の制約条件の排除こそが在庫管理における最大の取り組みと心得よ

 

 現在ある在庫、持たざるを得な い在庫を、増やさないように維持する仕組みを3.で紹介しました。

 ここで、在庫管理のもうひとつ のミッションについて説明したいと思います。5.に あげた戒めのなかでは「在庫管理における最大の取り組み」と表現されていますが、これは「持たざるを得ない在庫量を減らす取り組み」ということです。在庫 量は、それぞれの在庫拠点において制約条件によって決まっています。制約条件を排除することが、在庫を減らすことにつながるのです。

 注意すべきことは、さまざまな 制約条件があったとしても、在庫量を決めているのは、そのうち最大のもの一つということです。この最大の制約条件がボトルネックということになります。他 の制約条件を排除しても、在庫量は減らせません。

 図6にあるように、最大の制約 条件を排除すると、次の制約条件が顔を出し、これがボトルネックとなります。その制約条件をつぶせば、また次の‥‥。こうして次々に現れるボトルネックを つぶしていくことが、在庫管理の取り組みなのです。

 ところで「在庫削減」という言 葉がありますが、これと「在庫管理」とはまったく別物です。在庫削減はある機会を捉えて不良在庫を廃棄したり、過剰在庫を配送センターから工場倉庫に引き 上げたりするものです。あえて二つを関係づけるなら、在庫削減は、在庫管理というマネジメントのなかの、在庫を整理するための一つの方法ということになる でしょう。

 在庫管理は永続的に行うものです。目指すゴールは、もちろん「在庫ゼロ」で す。